「そっかぁ。じゃあそれ、僕が払えばいいよね?」
冒険者ギルドでそう決まってるんだったら、そのお金は払わなきゃダメでしょ?
だから僕が自分で払う事にしたんだ。
だってお姉さんたちの足、僕が勝手に治しちゃったんだもん。
それにね、僕、お金はあんまり持ってないけど、クラウンコッコの魔石が今は高くなってるんだったらそれで払えそうだし。
「いやいや、それは流石に無理だ」
でもね、ギルドマスターのお爺さんはダメって言うんだよ。
「え〜、なんで? 僕が勝手にやったんだから、僕が払ってもいいでしょ?」
「この規則は治療費を払った者が損害を被らないようにとできた規則だぞ。それを治療したものが支払うなど、本末転倒ではないか」
この規則はね、強い人や偉い人が弱い人に無理やりポーションとかを使わせないようにって決めたものでしょ?
お金をもらうのが目的じゃないから、僕が払うのはダメなんだって。
でも僕が勝手にやったのに、お姉さんたちがお金を払うのなんておかしいよね?
だからギルドマスターのお爺さんに、僕は文句を言おうとしたんだけど、
「いいのよ、ルディーン君。ギルドマスター、私たちはいくら支払えばいいのですか?」
そしたら横から3人のリーダーである赤い髪のお姉さん、さっき聞いたら名前はニコラ・キルヴィさんていうらしいんだけど、このお姉さんがギルドマスターのお爺さんにいくら払えばいいの? って聞いたんだよね。
「うむ。ルルモア、今現在だとどれくらいになるのだ?」
「はい。クラウンコッコの魔石を消費したとの事ですが、今の相場ですと一個当たりで大体200万セント強、金貨にして200枚と少しと言ったところで……」
「ちょっ、ちょっと待て! 200万強って、買取価格のの4倍以上になってるじゃないか!」
だからギルドマスターのお爺さんはルルモアさんに、今いくらくらいなのって聞いたんだよ?
そしたらそれを聞いたバリアンさんが、すっごくびっくりしてこう叫んだんだ。
でもね、ルルモアさんはさっき言ったじゃないかって。
「先ほども高騰していると申し上げたはずです。これでも商業ギルドと話し合って、値上がりを押さえている方なのですよ?」
クーラーって、売り出す前に抽選で当たった人が試作品を買う事ができたでしょ?
だからそれがどれだけ便利かもう解っちゃったもんだから、お金持ちはみんな欲しいって売り出す予定の商会に予約をしてるんだって。
でね、その中には当然お貴族様みたいな偉い人たちもいるから、ほんとだったら魔石の値段をもっと高くしてもみんな買ってくれるんだよってルルモアさんは言うんだよね。
「そうなのか?」
「はい。本当なら5倍以上になっていてもおかしくない状況なのです。ですがそこまで行くと流石に、よほど大きな商会しか手が出せなくなるので」
「確かに1個や2個ならともかく、商品として売り出す魔道具に使うだけの数をそろえるとなると、今の値段でも買えるところは限られてくるだろうな」
作れば売れるって解ってても、作った魔道具のお金が入ってくるまではかなり時間がかかるから魔石があんまり高いと作れるとこが少なくなっちゃうんだって。
だからなるべく多くのお店が作れるようにって、商業ギルドや冒険者ギルドは魔石の値段をあんまり上げないようにしようねって話し合って決めたそうなんだよ。
「なら仕方がないが……、二人分で金貨400枚以上か。この子らには、ちょっときつい金額じゃないか?」
「その通りなのですが、困った事にそれだけでは済まないんですよね」
「それだけじゃ済まない? って事は、まだ何かあるのか?」
「うむ。それについては、ルルモアよりわしが説明した方がよかろう」
ルルモアさんがそれだけじゃないんだよなんて言い出したもんだから、バリアンさんはびっくり。
まだなんかあるの? って聞いたんだけど、そしたらギルドマスターのお爺さんが、それはわしが話すよって言い出したんだ。
「金のかかる治療にはその対価を払わねばならぬ規則になっておると言うのは先ほど話したな?」
「ああ。だから魔石の値段の話になったのだろう?」
「だがな、それは触媒の値段であって、治療に対する対価ではないのだ」
「はあ!? って事は、まさか?」
「うむ。魔石を触媒として使った治療魔法の場合、冒険者はその使用者の家族や親族、それに同じパーティーメンバーやギルドに申請したクランと呼ばれる冒険者集団の一員でなければ、神殿での治療と同じ金額を支払わなければならない規則なのだ」
キュアとかで治せるおケガは、時間がかかっていいんだったら薬草をつぶして塗ったりしても直す事ができるんだよ。
でも手や足が取れちゃったり、死んじゃったりしたら魔法を使わないと治んないでしょ?
だからそう言う魔法を使える人が魔石を持ってきてもらっただけで全部治しちゃうと神殿が困るからって、おんなじだけの値段を払わないとダメって事になってるんだって。
「……なぁ、それってどれくらいするもんなんだ?」
バリアンさんが魔法のお値段を聞くと、ギルドマスターのお爺さんはルルモアさんの方をちらっと見たんだよね。
そしたらルルモアさんは、すっごく申し訳なさそうな顔をしてこう言ったんだよ。
「その系統の魔法を使用した場合は基本、触媒に使われるものとおなじ金額のお布施を支払う事になっています」
「なっ!?」
「あっ、でも今回は魔石が異常なほど高騰していますから現在の金額ではなく、普段このイーノックカウで取引されている金額で構わないと思いますよ」
「それでもそのクラスなら買取価格の3倍弱ってとこだろ? 二人にかけてるから、全部合わせて金貨700枚以上。街中に家が買えるレベルの金じゃないか」
これにはバリアンさんも、黙ってうつむいちゃったんだ。
だから僕、ルルモアさんに聞いてみたんだよ?
「ねえ、ルルモアさん。お姉さんたち、どうなっちゃうの?」
「……冒険者ギルドにはこのような場合、一時的に立て替えてギルドの依頼報酬から少しずつ返していくと言う制度があるの。だから前にルディーン君に直してもらった冒険者たちからは、その精度で治療費をもらっているわ」
「そっか。じゃあ、お姉さんたちもそうやって返せばいいんだね」
バリアンさんがあんなふうになったもんだから、僕、すっごく心配したんだよ。
でもルルモアさんからちょっとずつ返せばいいって言うのがあるって聞いて、ほっとしたんだ。
「それがダメなのよ。この制度はね、3年以内にすべての金額を支払い終わらなければいけないって規則があるの」
お姉さんたちはね、まだEランクの冒険者さんなんだって。
だから普通に生活するには困んないくらいのお金は稼げるんだけど、そんないっぱいのお金を3年間で稼ぐなんて無理なんだよってルルモアさんは言うんだ。
「じゃあ、お姉さんたちはどうなっちゃうの?」
「借金奴隷になるしかないでしょうね」
僕はね、びっくりしてお姉さんたちの方を見たんだよ。
でもお姉さんたちは、何でか知らないけど笑ってたんだ。
「そんな顔しなくても大丈夫よ、ルディーン君。初めから解ってた事なんだから」
「そうよ。借金奴隷って言っても、犯罪奴隷と違って命の危険があるような仕事をさせられる事は無いもの。ちょっと自由は無くなっちゃうけど、片足が無くて一生不自由するよりははるかにマシよ」
「それにね、治してもらったのはこの二人だけだけど、私たちはパーティーメンバーだもの。3人で借金奴隷になればその分期間も少なくて済むわ」
お姉さんたちはそう言ってくれたんだけど、
「だめだよ! だって僕が勝手に治したんだもん! ねぇ、お爺さん。なんかいい方法ないの? お姉さんたち、可哀そうだよ」
僕はそう言ってギルドマスターのお爺さんに何とかならないの? って聞いたんだ。
「抜け道が無いわけではないのだが……」
「何かあるの!?」
そしたらギルドマスターのお爺さんはね、ちょっと困った顔しながら教えてくれたんだよ。
「うむ。先ほどルルモアが申したであろう? この者たちは借金奴隷になるしかない。だがこのような場合、魔法を使った君が借金の返済の代わりにこの子らを引き取る事ができるのだ」
「そうなの? じゃあ、そうする! だって僕が勝手にやったんだから、お金なんていらないもん」
なんだ、そんな簡単な事でよかったの?
ルルモアさんやバリアンさん、それに冒険者ギルドのお爺さんもみんなしてもうダメだ! って顔してたからどうしようって思ってたけど、そんな事でいいんだら簡単じゃないか。
僕はそう思ってほっとしたんだけど、そしたらルルモアさんが大慌てでギルドマスターのお爺さんを叱ったんだよ。
「何を言い出すんですか、ギルドマスター!」
「だっだが、この子がこのように悲しそうな顔をしておるのだぞ。説明せぬわけにはいかぬであろう?」
「それはそうなんですが……」
ルルモアさんはね、僕がお姉さんたちをもらうってのに反対みたいなんだ。
でもね、僕が貰えばお姉さんたちは奴隷ってのにならなくってもいいんだよ?
僕、お金なんていらないからその方がいいんだけど、ルルモアさんはなんでそんなに怒ってるのかなぁ?
「ルルモアさん。なんでダメって言うの?」
「ダメって言うか……」
ルルモアさんはね、ちょっと考えてから僕に理由を教えてくれたんだ。
「ルディーン君。借金奴隷を買うにはね、いくつかの資格や条件がいるのよ」
「資格と条件?」
「ええ、そうよ。だから私は怒ったんだけど……う〜ん、よくよく考えるとギルドマスターの方が正しいのかしら?」
さっきまであんなに怒ってたのに、今のルルモアさんは自分の方が間違ってたのかなぁ? って、変な顔しながら頭をこてんって倒したんだ。
今日(木曜日)、急に土日出張が決まりました。
その上明日はその準備があるので書く時間が取れません。
と言う訳なので、話の途中ですみませんが次回は木曜日(なろうの方は金曜日)更新になります。